Gaspard de la nuit


 A・ベネデッティ・ミケランジェリ BBC<59>SS

 貴重なスタジオ録音だ。何種類か録音は出ているものの、解釈はほぼ変わらず彼の徹底ぶりがうかがえる。ある批評で「終生、全く変わることのなかった魔術的なアプローチに震え上がる」と書いてあったが、これほどぴったりな言葉は無いと思う。

M&A<59> SS+
 これはすごいライブだ。集中力が尋常ではなく、史上まれにみるほどの素晴らしい名演だと思う。彼独特の極限まで求める響きに思わず吸い込まれそうになる。晩年のようにいき過ぎておらず、最も良いバランスでテクニックの冴えも文句なく彼の描く世界を堪能できる。
AURA<87>SS
 バチカンでの晩年(まだ70才になってないが…)のライブ。もはやこのライブで、彼はラヴェルの世界を完全に超えてしまった。年代的には新しい方なので、録音は良いがかなり音が近く生の音がダイレクトに伝わり過ぎてライブの奥行きのある響きは残念ながら聞き取れない。別に理想的な演奏でもないし、聞いてて参考に出来る部分などほとんどない…これは彼の到達点であり、我々がそこに介入したり物申すすべなど全くないのだ。


イーヴォ・ポゴレリッチ DG<82> SS☆
 やはりこの録音は無視出来ない!ライブはスカルボなどもっと壮絶だが、まぁ抑えてこれというなかなかとんでもない演奏だ。聴けばすぐに分かるが、この難曲を弾く苦労など1ミクロも感じられない。彼の描く創造的な世界はかなり現代的なアプローチによるもので、簡単に言うとガブリーロフをもっと捻ったような感じ。


ワルター・ギーゼキング EMI<54>SS
 オンディーヌの最初1小節を聴いただけですでにこの録音の素晴らしさがうかがえる。しかしなんと美しいオンディーヌだろうか…淡々と豪快に弾かれるスカルボはちょっと個人的に好めないが、それも彼のピアニズムの特徴なのだろう。


サンソン・フランソワ EMI<67> S☆☆
 これこそ真に独創的なラヴェルだ!なんという表現の多彩さ、こういう演奏は最初から最後まで全く耳が離せない。ペダリングも他に聴くのと全く違い、あえて控え目に使用し、そこから深い響きを紡ぎ出す彼はやはり天才だ。。
EMI(スカルボのみ)<47>
 23才のフランソワ若き日の録音だが、スカルボだけというのが何とももったいない…多分全部録音したんだろうけど。もちろん彼の解釈はこの時点で確固たるものとして完成しているが、全集と比べるとテクニックの鋭さが全然違ってこちらの方はスピード感も良いので、完全にフランソワのものというよりラヴェルの音楽と上手い具合に溶け合っている感じがする。


モーリス・ラヴェル(絞首台のみ) DENON<25>
 絞首台だけのロール録音だが、この録音の存在価値は非常に大きい。ビニェスとこの曲の解釈で仲違いしたことは有名だが、確かにラヴェルは鐘を単調に弾いてはいる。しかし鐘以外の旋律、和音などの響きの何と多彩なこと!これでこそ鐘が生きてくるのだろう。ちなみに最後のページに最低音近くのBが何回も鳴るがなぜかラヴェルは1オクターブ下げていない…ともかく学ぶところが非常に多い記録である。


キャスリーン・ベーコン(オンディーヌのみ) DENON<24>
 80年前にこんなに完璧で美しい演奏がされてたのは何とも驚きだ!この演奏の前ではアルゲリッチでさえ全く霞んでしまうほど。技術的・音楽的にも非常に余裕があるこんなに素晴らしいオンディーヌを私は聴いたことがない。ちなみにこのベーコンというピアニストはイギリスの女流で、アメリカのピーボディ音楽院で学び1916年にアーサーニューステッドと結婚、21年にニューヨークデビュー。ベートーヴェンやシューベルトのチクルスを没後100年に開いたピアニストらしい。


フリードリヒ・グルダ DECCA<53> S+
 グルダが録音した曲の中で、ガスパールは最もヴィルトゥオーゾ的な作品だろう。オンディーヌからなんとなく落ち着きがなく、普通は響きの中で旋律を浮かべてくるが、グルダの場合は各声部に命を与えるかのごとくバッハのように線の動きや絡みを強調し、そこから響きを醸し出している。絞首台とスカルボにおいては、かなり緊張感を張り詰めたフランス人やロシア人とは全く違うヴィルトゥオジティを求めた演奏だ。20世紀のピアニストシリーズでやっと日の目を見たが、それでもまだまだ埋もれている感はある。フランソワやギーゼキングも素晴らしいが、もっと取り上げられるべき録音だと思う。
amadeo<78> S☆
 この録音でグルダのガスパールは完成した。完全に自分の世界を形成しており、その表現力は他を寄せ付けない存在感を示している。デッカの録音と比べると非常に面白く、25年たったこちらの録音の方がかなりバリバリ弾いているのも興味深い。絞首台での鐘の音の巧みな扱い方やスカルボでの大胆な弾き方、グルダのかなりマイクを近づける録音方法で独特の響きを完全に拾っており細かな表現やペダリングやフレーズまで聴きとれる。


アンドレイ・ガブリーロフ EMI<>
 
DG<92>S+
 オンディーヌからゆっくりめのテンポでじっくり歌い、ダイナミクスを巧みにつけながら音楽を作ってくる。期待するスカルボも前の録音より幻想的な気分が増し、クリアな部分との対比がより一層強調されている。


ヴラディミール・アシュケナージ <65> S☆
 アシュケナージはあまりラヴェルを録音していないのでこれは貴重だ。しかもかなり個性がはっきり出ておりこの年にしてこの表現力はすごすぎる。オンディーヌは少し響きに違和感を感じるが、絞首台からは見事にはまっている。とりわけスカルボでの音の対比はとても大胆で驚かされる。技術に走らずある意味技術を見せるという彼らしいやり方だ。


マルタ・アルゲリッチ EMI<74> S+
 まぁ上手い!テクニックはもちろん表現や流れにおいても理想的、女性でこの演奏に匹敵するものはなかなか無い。この曲独特の陰影は彼女自身のものというより、彼女の表現によるものだ。絞首台の後半でかなりアクセントを強調したりと工夫も見られるが、全体にはやはりオンディーヌが一番良いのは、曲の性格に合っているのだろう。


野島稔 Reference<89>
 オンディーヌ冒頭からとても美しい。曲間を意図的に短くしているのも特徴だが、絞首台やスカルボでは時折大胆な表現も見せてくる。特にスカルボの少し遅めだが自在なテンポも不気味さが増していて実にハマっている。


クリスティーナ・オルティーズ(スカルボのみ) <69>
 クライバーンコンクール優勝時の録音で、スカルボの他にフェルナンデス、ブラームス、ショパンなどなかなか関連姓のなさそうなプログラムで面白い。そして最後に弾くこのスカルボは、凝縮された表現で切れ味鋭いなかなかの熱演でこのピアニストの資質をよく表しており、1位納得である。


 

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