Piano Concerto No.1

 ホロヴィッツ セル指揮ニューヨークph PALEXA<53>SS☆☆

 ホロヴィッツファンでこの録音を知らない人はまずいないだろうと思われるが、ここが彼の頂点であるといっても過言ではない。テクニック・精神ともに後にも先にもこれ以上のものはない!この録音の後、彼は引退し大きなブランクを迎えることになる。そんな彼の歴史を抜きに考えても、チャイコフスキーのコンチェルトでこのような唯一無二の録音を残した彼のせいでこの曲は方向性を大きく失ってしまった(その後、アルゲリッチがどんなに速くオクターブを弾いたって、足元にも及ばない)。最初から最後まで全く耳が離せず、1番最後などホロヴィッツのオクターブが速すぎて完全にオケは置いていかれ非常に笑えるのだが、セルもここまで熱い演奏を繰り広げるのは珍しい。ちなみに最近、オタケンレコードからさらに良質に復刻されて手に入りやすくなったので、まだ聴いていないという方はすかさずCDショップへ!

 


ヴラディミール・ホロヴィッツ ワルター指揮ニューヨークpo.<48>SS☆
 セル盤と並ぶ爆演だ!こちらの方が録音は悪く聞き取りにくい部分もあるが、聴衆の熱狂はセル盤を上回っており一楽章が終わった途端すごい拍手!まぁこんな演奏を聴かされて正気ではいられないだろう。表面的にはセル盤と同じく唯一無二の技巧が目立つが、その研ぎ澄まされた表現による旋律の美しさや、完全にチャイコフスキーの音楽的特徴を掴んだルバート、テンポの巧みな操作などこちらも充分歴史的に事件である。

トスカニーニ指揮NBCso.RCA<43>SS+
 これも有名な録音で、細部まで語るより聴いた方が早いが、とにかくトスカニーニ相手にここまで弾いたのはホロヴィッツ以外にはいないだろう。もちろん他の指揮者との録音に比べると少しは遠慮している部分もあるが、それ以上にやはりこの組み合せは強烈でトスカニーニもかなり熱い指揮を繰り広げた歴史に残る記録である。ちなみに同じ組み合せで41年盤もあるが、基本的にそう変わらないので好みだろう。

スタインバーグ指揮ハリウッドボールo.M&A<49>S☆☆
 セル、ワルターの他にも爆演はあった!このライブも物凄い熱狂ぶりで、五感を揺さぶる凄まじい演奏だ。ラフマニノフのコンチェルトと同じくライブごとに表現はかなり異なり、彼の天才的としか言いようがない驚くべき即興性を伴った音楽は非常に刺激的である。


アルトゥール・ルービンシュタイン ロジンスキ指揮ニューヨークp PALEXA<46>S+
 ルービンシュタインがかなりバリバリ弾いていた全盛期の貴重な録音で、これはこれですごい。ホロヴィッツさえいなかったら…と彼は何度思っただろうか。もちろん技術的にも言うことがなく、一楽章などテンポはかなり速いが癖のあるものではないのであまり違和感は感じない。しかしカデンツァの弾き方などは結構独特で、一聴の価値があるし、お馴染みの旋律でもその美しさには耳を奪われる。

ラインスドルフ指揮 ボストンSO.RCA<63> A+
 ルービンシュタインはこの曲に関して「やたらバリバリ弾くのはお門違いだ」と宣言し、もっとこの曲の美しさを引き出すべきと主張しているが、なるほどこの録音を聴くと納得がいく。結構な年齢なのであまり覇気はなく物足りなさもあるが、所々で見せる仕草などかなり磨かれている。ただそうは言ってもやはり元々のヴィルトゥオーソの血は隠せない。


シューラ・チェルカスキー ルートヴィヒ指揮ベルリンph<51>S☆☆
 チェルカスキーらしいものすごくユニークな演奏だ。もちろん正当派な演奏からは程遠いが、大抵聞き慣れたこの曲から更なる可能性があることを見事に提示してくれている。これは一聴の価値あり!


ジョルジュ・シフラ ヴァンデルノート指揮フィルハーモニアo.EMI<58>S☆
 シフラはヴァンデルノートといくつかコンチェルトの録音を残している、気が合ったのかヴァンデルノートがおおらかなのか知らないが、どれもやりたい放題やっており楽しめる内容だ。
このチャイコフスキーもホロヴィッツとは全く違うが、非常にスリリングなヴィルトゥオーゾぶりを発揮しており、いささかリスト的ではあるが凄い演奏だ。技術的に高度な場所にくると瞬間風速が急激にあがったりして、テクニックも冴えまくっている。抒情的な部分では非常に感傷的な歌い回しではあるが、彼のロシア節というのはどこか違和感が残る。


ワシリー・サペルニコフ チャップル指揮エオリアンo. PEARL<26>S☆
  作曲者自身から直接示唆を受けたというサペルニコフ、結構独特な演奏で基本的には抒情的でありながらも、要所で大胆な表現を繰り広げたりして大いに楽しめる演奏だ。一楽章カデンツァなどもなかなか豪快。

アンドレイ・ガブリーロフ ムーティ指揮フィルハーモニアo EMI<79>
 ガブリーロフが弾くコンチェルトはどれも傾向が似ており、ヴィルトゥオーソ的な作品ではあまり技術などを誇示せず余裕を持って弾ききっている印象が強い。その為レコーディングではスリリングさに欠けるのだが、所々でたまに爽快なスピード感を出しているので物足りなさは感じない。3楽章などはやはりさすが!後の88年にアシュケナージとも共演しているが、個人的にはチャイコフスキー優勝後のムーティ盤の方が勢い共に良いと思う。


スビャトスラフ・リヒテル カラヤン指揮ウィーンso.DG<62>A+
 リヒテルなのでかなり骨太で逞しい表現かと思うと意外にまろやかで驚く。カラヤンのクソ遅いテンポの指揮に触発されてのことだろうか。ベルマンでさえカラヤンだと遅いし、ワイセンベルクあたりがまだ奮闘している方だ。しかし、さすがリヒテルの表現力は万能なのでカデンツァなどは聴かせてくれる。あと文章では説明出来ないが、彼のオクターブの弾き方はものすごく特徴的。他にアンチェルとムラヴィンスキーとも共演していて、特に後者はカラヤン盤とは対照的だ。
アルゲリッチ コンドラシン指揮バイエルン放送so.PHILIPS<80>A+
 67年と94年にもグラモフォンに録音しており、ヴィルトゥオーゾの彼女にとってはもちろんこの曲も主要なレパートリーである。しかし、彼女のファンならまだしもこうして聴き比べると競合盤の相手があまりにも悪すぎる。テクニックも言うことなく、表情豊かでスリルもあるのに…。70年代にデュトワとN響でテレビ放送されたものがあったが、両者ともかなり若々しくて白熱した演奏だった。
ちなみにこのコンドラシン盤はスピード感溢れるライブなのだが、珍しく3楽章の冒頭で思い切り大胆に音を外している。でもミスタッチと思えないほど音楽全体が鬼気迫っているのは聴きもの。
バイロン・ジャニス メンゲス指揮ロンドンso.<60>A+
 ホロヴィッツの影響を受けまくった録音で、どうも中途半端で良くない。ライブで実際に聴くとかなり興奮するだろうし、もちろん自己表現すべきところもツボは押さえてあり技術的にも高度ではあるが。


ヴァン・クライバーン コンドラシン指揮RCAシンフォニーo. RCA<58>
 チャイコフスキーコンクールに優勝した頃の録音で、そこそこ上手いものの冷静に聴くとそこまで残すべき録音とも思えない。勢いに任せている部分も多く、例えば3楽章の第二主題など全然美しさがないので個人的にはいただけない…彼は演奏以前にとても運に恵まれていたんだろう。この録音を聴いて思うのは彼の演奏の細部がどうというよりも、彼がコンクールで優勝したことに最も意味があったということ。つまり時代の産物というわけで、演奏活動がそこまで続かなかった原因もそこにあるだろう。コンチェルトよりもソロ作品の方がもう少し彼の良さが出ているように思う。



 

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