Sonate h-moll


  ヴラディミール・ホロヴィッツ EMI<32>  SS

  恐るべき演奏だ!これを凌駕するものは未だに出ていない。なんというヴィルトゥオジティの凄さ!もはや、全体を通じてただただ驚くばかりである。悪魔的というのは彼のためにある言葉で、最後のオクターブなど人間が弾いているとは思えない。こんなのを実演で聴いたら間違えなく失神しそうだ。


ホルヘボレット  EVEREST<61>  S++
  ボレットのリストのソナタと言えば、80年に録音したものがよく知られているのだが、そちらはテンポも遅く音楽性は高いかもしれないがあまり覇気が感じられず特に良いとは思わない。それに比べてこの61年の録音はボレットの本領が発揮された素晴らしい名演である。解釈は基本的にストレートなものだが、随所に彼独自のセンスを感じる弾き方、音を少し加えて響きの充足感を満たす判断、そして特有のヴィルトゥオジティなど様々な聴き所があり、特に耳を奪われるのは理想的な緩徐部分にちりばめられた美音の数々だ。


マルタ・アルゲリッチ  DG<71>  S+

  かなり有名な録音で、もちろんあまり文句の付けようもなく腹立たしくなるほど上手い。細部がどうというのはさておき、聴いてもらいたいのはもちろん最後のオクターブ!左手の連続を信じられないスピードで弾いており、間違いなく女性最速だと思う。しかし、アルゲリッチを女性というのはいかがなものか…笑。


アレクシス・ワイセンベルク EMI Angel AA-8335<67>  S+

  最近CD化されたが、これはなかなかの快演・熱演であり、全盛期のワイセンベルクの凄さを痛感する。レチタティーヴォなどの緩やかな部分ではテンポをぐっと落としてじっくり歌い上げ、後半のフーガのあたりからは、もはや待ってましたといわんばかりの独壇場!表現も初めよりずいぶん大胆になっており、最後のオクターブもそこまで速くないものの真に迫ってくるような演奏だ。


ヴラディミール・ホロヴィッツ RCA<77> S☆

 32年録音の演奏とは天と地ほども違う演奏で、こちらの方は70年代後半のホロヴィッツらしく実にサディスティックな演奏である。スクリャービンなどではそれも良いだろうが、リストでは賛否両論であろう。個人的には32年のストレートな演奏の方が好きだが、こちらは唯一無二のものでここまで徹底的にやられると逆に襟を正したくなってくる。


ジョルジ・シフラ  EMI<68>  S☆
  ハンスリックはリストのソナタを「支離滅裂」と酷評した。おそらくポリーニやツィメルマンしか聴かない頭の堅い批評家もこの演奏を「支離滅裂」と酷評することだろう。それほどアクが強く緩急の波が尋常ではない、いわゆるシフラ節であるがラプソ\ディなどとは明らかに違う表情である。確かにテクニックが高度になっているところなどで、時折本領を発揮しようとするもののそれでもかなり抑制しているのだ。なるほど中間部の緩徐部分などかなり美しく歌っているのが分かる。オクターブの連続もむやみに飛ばさず、しかしその迫力は凄まじくて聴いていると体ごと持っていかれそうになる。一つ気になる点は残響のせいか時々音が変に聞こえる部分があったことぐらいか。


ヴァレリー・アファナシエフ DENON<2000> S☆
 まず出だしのテンポ、ソの音の後ソの音が全然出てこない…リヒテルはこのソナタをステージで弾く際始めるまでに30秒待つんだと言っていたが、これはソとソの間が30秒ぐらいありそうな勢いだ。つまり全体の時間は41分もある、もちろん最長であるが聴いてみると全てが遅いわけではない。まぁ平均的なテンポよりは遅めだが、せきこむ箇所などは意外に速かったりする。ちなみに彼が初録音した時は26分だったらしい。この独特の世界は他にないものであるが、やはり初録音を聴いてみたい。


レオン・フライシャー PHILIPS<59>  

 フライシャー全盛期の録音で、優秀なテクニックでまとめたなかなかの名演だ。彼はあまり知られていないが右手が使えなくなる前の彼は、ジョージ・セルが認めるほどのヴィルトゥオーゾであった。


野島稔 Reference<86>  

 和音の響きの美しさ、構成とテンポの良さに耳を奪われる演奏だ。かといって、技術的にもかなり高度なレベルで細部にわたっても実に緻密である。普段聴かれる様な豪快なリストとは少し趣きが違う。


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