アメリカン・サクセス・ヒーロー!”無一文から大金持ちへ”というアメリカ社会の典型的なサクセス・ストーリーを体現した作曲家である。彼はジャズと19世紀ヨーロッパの伝統的音楽との融合によりアメリカ独自の様式を生み出したことにとどまらず、ポピュラー音楽を芸術音楽の域にまで高めた。さらに、ピアニストとしても誰一人持ち合わせていない“喜びをめぐらす”という稀有の資質を持っていた。ある脚本家は、「ガーシュインがピアノを弾こうと椅子に座ったとき、私はユーモア、新しさ、そして特に活力の高波を瞬く間に感じました。部屋は新鮮な空気で満たされ、皆がそれを感じ、皆がそれを吸い込みます。」と語った。
有名な「ラプソディー・イン・ブルー」を作曲した時、彼はまだ24歳の若者で、決して品行方正な人物ではなく、生涯未婚のまま酒と女にお金を使うのが楽しみという当時流行の「ジャズ・エイジ」的人物の典型であった。しかし、そんな人物だったからこそ彼には怖いものはなく、新しい挑戦に向かうことができたのだろう。彼以外にも、ドボルザークやドビュッシー、ストラヴィンスキー、サティなどの作曲家たちが、アメリカの黒人音楽を元にした曲を作っているが、彼らは黒人音楽を「聴いた」だけであり「体験」していなかった為、クラシックの枠を越えることはできなかった。しかしガーシュインは先述のラプソ\ディーで見事にやってのけたのだ、彼が創作したものは、クラシックとラグタイムを合わせただけの単純な音楽ではなく、そこにはブルースやジャズのもつ「ブルー」な雰囲気とユダヤの人々が愛する独自の音楽、クレツマーの要素も加えられ、人種のるつぼニューヨークを象徴するかのような音楽だった。さらに、どこを切っても楽しめるものとして作られていることであるため、何度聞いても飽きず、どこから聞いても楽しめるスタンダード・ナンバーになっているこの曲の構造こそ、アメリカという国の構\造そのものとも言える。まさに彼はアメリカが生んだスーパーヒーローであった。
Piano de Virtuoso




