イグナッツ・フリードマン(1882-1942)
真に独創的な表現主義者!
イグナツ・フリードマンは最も独創的で表現力の豊かなピアニストにもかかわらず、現在ほとんど知られていない。戦前の録音しかなく、新しいライヴ録音の発見もないことが、忘却に拍車をかけている。存命当時は大技巧家として大向こうを唸らしたが、個性的で我の強い演奏の為、識者からは酷評されることも少なからずあったようだ。ショパンではコルトー、ベートーヴェンではシュナーベルに、知名度こそ劣るものの、むしろフリードマンの演奏のほうがあらゆる意味で優れていると私は思う。彼は名教師レシェティツキの弟子であったことが有名であるが、若い頃にドイツ最大の音楽学者フーゴー・リーマンの指導を受けたおり、これが彼の音楽を決定的なものにした。リーマンは音楽の三要素を徹底的に分析し、アゴーギクの概念を初めて明らかにした大家であり、主著『音楽辞典』は今日でも重視されている。フリードマンの大胆な表現や過剰ともいえるアゴーギグは、リーマンによって身についたものであった。彼の編曲作品にはシュトラウスの「春の声」や、バッハのブランデンブルグなど優れた編曲が多く、オリジナルの作品は100以上もある。こんな天才が今の時代、忘れられていくのはとても痛切である。
Piano de Virtuoso




