フリードリヒ・グルダ(1930-2000)
ウィーン過去最大の異端児、そして革命児!
私自身最も影響されたピアニストで、人間的にも音楽的にも一番好きな存在である。承知の通り、彼はクラシックだけでなくジャズも弾くしロックもやるし、フリーミュージックなるものまで演奏する。ピアノだけでなくクラヴィコードという古楽器も弾くし、リコーダーも吹くし、ウィーン訛りの民謡まじった歌を歌い、モーツァルトをクラヴィノーバで弾いたりする。つまり、クラシックの音楽界にとっては相当厄介な存在であるが、とんでもない才人なのだ。そんな彼はたくさんの作品も残しており、クラシックとジャズを融合させたようなものが多いが、ジャズにしてはテクニカル過ぎるのでやはり特別な位置におけるオリジナル作品と言った方がいいだろう。彼の技巧は最高レベルのものであるがそれを決して全面に出さず、クラシックで技巧重視の作品はほぼ取りあげていない。ホロヴィッツを嫌いなのも納得できるし、リストやロシア物を弾いている所などちょっと想像できない(先日デビュー録音のプロコが出て驚いた)。
確かに平たく言えば彼は「なんでも屋」ということになるが、やはり彼の基盤はクラシックである。ジュネーブ国際コンクールで優勝した16歳の時点で、ウィーンで右に出るものはおらず、すでに完成されたピアニストであったという(あのブレンデルでさえ、当時グルダには及ばなかった)。しかし、天才であるがゆえに逃げ道が必要だったのであろう。ジャズを積極的に取り上げ、燕尾服を脱ぎ捨てた。今でさえジャズを弾くピアニストは多いが、当時ヨーロッパでは「黒人音楽」と低劣に見られていた音楽である。ヨーロッパで成功を約束されたピアニストがそれを取り上げたことが、どれだけスキャンダルになったかは容易に想像できる。同じく天才であるグールドが見つけた逃げ道は、録音のみのピアニストという選択である。(それだけでも事件だというのに…)グルダはジャンルの垣根を越えてさまざまなものを試み、死ぬまで自分の信念を貫き通した。今の時代に求められているピアニストは、第2の彼のような存在ではないだろうか。
Piano de Virtuoso




